恥骨結合離開と言われての、すぐにイメージできる人は少ないと思います。
この恥骨結合離開とは、産後のお体に出る様々な症状の代表的な一つです。
産後の症状と聞いて、イメージしやすいものとしては、腰の痛みやむちうちに
なったような感覚の首の痛み、お尻や太ももの裏がピリピリと痺れるなどです。
恥骨結合離開もまた、同じように産後のお体に起こる症状なのですが
この症状は最近、増加傾向にある産後の恥骨痛と言われるものです。
通常の産後における恥骨の痛みは、痛みが出ても数日安静にしていたり
歩く歩数を少なくすることで、痛みが引いていくのですが
その恥骨痛の種類の中でも、単純性の恥骨痛と言われるものではなく、
歩行困難や正しい歩行姿勢ではなく、脚を引きずってしまうような歩きかたに
なってしまったり、恥骨に激しい痛みが出て、数日経過しても全く症状が治まらない
などの状態を恥骨結合離開(ちこつけつごうりかい)と呼びます。
この障害の初期症状では、痛みも弱く軽く考えがちですが、重度症状に陥ってしまうと
数か月間、杖や車いすを使用しての生活が続いたり、その状態で進行してしまうと
場合によっては手術をしなければならない事もあります。
産後の場合は育児が思うようにできない状態になる事が多く、日常生活もままならない
ために、そのストレスは計り知れません。
●そもそも、恥骨結合とは何なのか?
恥骨結合とは文字通り恥骨と言う骨の繋ぎ目です。恥骨は骨盤の一部であり、股関節の真ん中に
位置します。左右にある恥骨は、線維性軟骨(せんいせいなんこつ)と言う組織と
靭帯でくっついており、この左右の恥骨の繋ぎ目の部分が恥骨結合です。
恥骨結合部の大きさですが、一般女性の場合平均3mm程度だと言われています。
恥骨結合は、基本的に不動結合(動く事がない結合)ですが、女性の場合は妊娠や出産
または、男女限らず骨盤を左右に激しい揺さぶる動作を頻繁に動かしたりする事で
結合部がズレてしまったり、広がってしまうことがあります。
なぜ恥骨結合離開に悩む人は、妊娠中や産後の女性に多いのかと言うと
妊娠をする、普段多く分泌する事がないリラキシンと言うホルモンが分泌されます。
このリラキシンと言うホルモンの作用は出産を円滑に行うために関節やじん帯を弛緩させる
作用があり、出産が近づくにつれて、この広がりが強くなっていきます。
この広がりに関して個人差はありますが、出産前後では約1~2cmまで広がります。
出産後は時間の経過ととも、多少股関節に痛みがあっても、徐々に軽減していくのですが
一度恥骨結合離開になってしまうと、痛みが段々ひどくなっていきます。
また、歩くことができるけれど、脚を上げる事ができないなどの症状が出る事があります。
あくまで目安ですが、産後3ヶ月を経過しても、恥骨結合が6mmを超えているようであれば
恥骨結合離開と考えてもよいでしょう。
またセルフチェックも必要で、左右の恥骨部分を触ってみ、恥骨結合部にくぼみや隙間を自覚
できる事もあります。
●恥骨結合離開の原因は?
先程話したように、妊娠や出産の過程で恥骨の痛みは多くの女性が経験する事なのですが
恥骨結合離開まで症状が進行してしまう原因としては、分娩の方法や母体に合わないぐらいの
大きな赤ちゃん、筋肉疲労や股関節の柔軟性低下などの影響によるところが大きいです。
他の要因としては、短期間での過度な体重増加や運動習慣、日常姿勢の悪さなど
様々な要因が重なって起こる事もあります。
●恥骨結合離開の予防法は?
産後の症状に関しては、リラキシンの影響が大きく、分娩方法などにも影響するので
事前に予防する事は不可能と言わざるを得ません。
しかし、出産に向けて事前に準備をすることで、発生リスクを低下させる事ができます。
①腹筋や内転筋(太ももの内側の筋肉)などを適度に鍛えておく
②深くしゃがむスクワットや股関節を広げるストレッチをゆっくり行う
③猫背や反り腰など正しい姿勢になるように心がける
このような事前準備をしておくことで、出産時の恥骨結合離開は、ある程度回避する事が
できると思われます。
特に妊娠初期から恥骨に対する違和感や痛みを感じていたり、経産婦の場合は妊娠中に痛みや違和感
がなくても、産後に急に痛みが出て、恥骨結合離開になってしまう事も多々あります。
経産婦の場合は、1人目の出産より2人目や3人目の体に対する負担が蓄積してしまうので
十分注意する必要があります。
●恥骨痛に対するケア方法は?
恥骨痛に関して、事前の準備をする事は理想ですが、なかなか普段からできる人が少ないと思います。
ですので、もし妊娠中や産後に少しでも違和感を感じたら、すぐに集中的にケアをする必要があります。
その内容としては
①体全体(特にお尻や下腹部)を温める
②お尻や内転筋を入念にマッサージをおこなう
③同じ姿勢や長時間の立ち姿勢などをしないように安静にする
以上の事などを早急に、そして集中的に行う事が大切になります。
集中的に行った場合、2~3週間で痛みが引いてくると思います。
●当院にご来院されたNさんの場合
当院にも産後の恥骨結合離開と病院で診断されたNさんがご来院されました。
Nさんは産後3ヶ月の27才の方です。身長が150cmと低く体の線が細く
華奢な感じです。ただ出産した赤ちゃんは、3400gと大きく、産後に
股関節と腰の痛みが激しくなり、病院に行ったところ恥骨結合離開と診断されました。
病院でリハビリを続けたようなのですが、股関節や腰の痛みがなかなか改善できず
当院にお越しになりました。初めて来られた時、脚を引きずり背中を丸めた猫背でしたので、
一目見て産後の恥骨痛だとわかりました。
触診や股関節の可動域チェックなどを行ったところ、内転筋の硬さと姿勢の悪さが主な原因だと
特定できたので、まずが内転筋の筋肉を弛緩させるオイルケアを入念に行いました。
もちろん、女性のデリケートな部分をしますので、当院ではその施術を行う場合には
女性スタッフが施術をさせて頂きます。
4回ほどの施術で内転筋の筋肉が緩みましたので、その後はPNFストレッチや
ゆっくりと股関節を広げる動的なストレッチなどを行いながら
股関節の状態を徐々に改善していきました。
その後は猫背になった姿勢を改善させるために、骨盤矯正や背骨の歪みなどを矯正する
姿勢矯正などを行いながら、徐々に姿勢を正しい位置に変化させていきました。
この姿勢矯正を4回ほど行い、その間にレッグレイズなど下腹部の筋肉を鍛える腹筋運動や
インナーサイやチューブを使った内転筋トレーニングなどにより恥骨結合を安定させる
トレーニングを行いました。
Nさんは、期間で言うと約2ヶ月、合計10回の施術で股関節の痛みや違和感はすべて
なくなりました。
Nさんの場合は、日常的な姿勢の変化(猫背)が恥骨結合離開の最大の要因だったので
日常生活で正しい姿勢を保つための指導や、日々行うストレッチや簡単な筋トレのメニュー
などについての指導を行いました。
●恥骨結合離開になってしまった方へ
不幸にも恥骨痛や恥骨結合離開になってしまった方は、とにかくまずは股関節や骨盤に対して
負担をかけないように安静にしてください。
そして、早めに整形外科や接骨院、整体院などの通院する事をお勧めします。
そして、そこで指導された事を守り、ご自分の体のケアをしっかり行って下さい。
※お客様の声はあくまで個人の体験談であり、得られる結果には個人差があります。